別れを告げる葬送の鐘

 薄暗い部屋に、7つの影がぼんやりと蟠っていた。くっきりと笑みの形に似た月が、硝子を通して淡い光を部屋の中に落としている。この場所に居るべきではない人間がひとり紛れていたが、彼らはそのことについて何も言わなかった。道をたがえたとはいえ彼は確かに仲間であり……協力者でもあるからだ。
 時間は深夜、ほとんどの者はもうとっくに床に就いている時間である。
「……どうあっても、決行なさるおつもりですか?」
「無論だ。そのためにもう準備は整えてある。これは避けられぬことであるし……今更取りやめることはできない」
「確かにそうですが……」
 半ば以上諦めていたのだろう、進言した男は反論に対して明確に言を継ぐことができず、視線を落とした。語尾を濁しながら、それでも言わざるを得なかったのは、できることなら翻意を促したいという本心の表れだろう。
 指示に従い、計画を練り根回しを行い、舞台を整えたのは確かに自分達だ。それは与えられた目的が正しいと信じ、そうすることが必要だと感じたからではあるのだが……同時に、僅かな希望に縋って、ぎりぎりの土壇場で計画が中止になればいい、実行の必要性が喪われればいいと願ってもいた。
 しかし、時は来た。来てしまった。
「……では……」
「ああ」
 ためらいがちな別の男の声に、中心の人物がはっきりとした声で応じる。意志の強さが表に出た、若い女性の声だ。
「予定通り明晩、『クリス・ライトフェロー』は死ぬ。……不幸な事故によって、な」

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